相続税の「物納」
「令和2年都道府県地価調査」の結果が国土交通省から公表されました。
それによりますと、全国全用途が平成29年以来3年ぶりに下落に転じ、全国住宅地の下落幅が拡大し、全国商業地が、平成27年以来5年ぶりに下落に転じるなど、新型コロナウイルス感染症の影響により、これ
までの回復傾向から変化した、とあります。
コロナショックで「いずれ不動産価格が大暴落する」という言葉を経済アナリストなどから聞くことが多くなりました。
バブル崩壊時は、相続税を不動産や株式などの「物」で納める人が多かったと聞きます。
コロナショックでも、相続税の物納を選択する人が増えるかもしれません。
今回は、不動産の物納について仕組みを調べてみます。
相続税は、相続開始から10ヵ月以内に原則金銭で一括納付することが原則です。
どうしても現金で一括納付できない場合には、一定の条件を満たせば最大20年の延納(分割払い)が認められる。
それでも納付が困難な場合に、不動産や株式での「物」が認められる。
「現金」 → 「延納」 → 「物納」の順ということになります。
物納できる「物」にも順序があり、
① 不動産 船舶 国債証券 上場株式など
② 非上場株式
③ 動産
となります。また物納劣後財産といって転売しにくい不整形地などは後回しになります。
実際に物納件数は少なく、
2019年度は、全国で相続税の申請が11万件以上ある中、そのうち物納はわずか61件!!
申請件数は、1990年度に1238件、91年度に3871件、92年度には1万2千件台まで急増したバブル崩壊後に比べれば少ないですね。
・・・バブル崩壊後は地価が一気に下落し、相続税路線価が地価を上回る逆転現象が起こったことが要因とされています。
令和2年度の全国地価調査の結果が国土交通省から9月30日に発表されましたが、コロナショックの影響を反映して、商業地、住宅地で下落に転じたとなっております。
日本では、相続人が取得した相続財産の約4割を不動産が占めます。
不動産を売却して相続税を支払うケースはよくあります。その場合、申告期限の10ヵ月以内に不動産取引の決済を済ませ、現金化しなければならず、前もって準備しておければいいですが、時間の余裕がない場合は相手に買い叩かれるケースもあります。
―物納のメリット-
① 市場で売却が難しい不動産(がけ地、不整形地など)でも、相続税納付期限内に納められる。
② 譲渡所得税がかからない。
(現金化する必要がないので、それに伴う税金や売却コストがかからないため)
―物納のデメリット―
① 税務署は、不動産を市場の時価で評価してくれません。相続税評価額(路線価評価など)を使う。
② 不動産の土地の境界確定が必要。つまり測量が必要になりますので、隣接地が多かったり、広大な土
地の場合は相当の費用が発生します。
③ 納税者側で、物納する不動産を選んでいても、そのとおりに税務署が受け付けてくれるとは限らない
④ 申告書を期限までに提出する必要があり、手続きが複雑である。
相続税は現金納付が原則ですが、最終手段として物納があるということだけ理解しておくことにしましょう。ちなみに、物納された不動産は、一定期間を経て、公売に出されるということになります。
細谷不動産